入野医院(大阪 難波駅5分)
多発性硬化症センター

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京都民医連中央病院
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MSの治療

MS治療薬は世界で12種、日本では5種
早期治療開始の重要性の根拠
インターフェロンβ(アボネックス、ベタフェロン)
フィンゴリモド(イムセラ/ジレニア)
ナタリズマブ(タイサブリ)
グラチラマー酢酸塩(コパキソン)
国内で治験進行中のMS薬
「MS治療に伴う副作用」をどう考えたらよいのか
  

ナタリズマブ(タイサブリ)

タイサブリは、欧米で9年間利用されている非常に有効性の高い優れたお薬です。
日本では2014年の7月から利用可能となりました。

4週に1度外来で1時間点滴します。再発を抑える効果が、インターフェロンが30%、フィンゴリモドが54%程度、 タイサブリでは70%くらい再発を抑えます。
最大が100%ですので、フィンゴリモドがインターフェロンの2倍、タイサブリは3倍程度の効果があると感じています。

私はこれまでで60人以上の方に使つていますが、本当の再発があった方は非常に少ないです。
インターフェロンでは7割、フィンゴリモドでは4割程度の人でたまに再発があるのですが、このお薬では殆どありません。

特にMRIで病巣が確認できる再発が起きた方は、非常に稀です。多くの人で、ほとんど再発が止まってしまうお薬だと言えます。




(1)なぜ効くか

なぜ効くかを説明します。

まず、薬を使っていないMS患者さんでは、脳や脊髄を攻撃する、病気の原因になるリンパ球が血管の中を流れているのですがが、 このリンパ球が脳を攻撃するためには最初に血管の壁にくっつく必要があります。

くっつくときには鍵と鍵穴のように、リンパ球の表面にあるアルファ4−インテグリンという突起が、 血管の壁の表面にあるVCAM-1(ブイカムワン)という分子と結合することが必要です。 鍵と鍵穴みたいな関係、ジッパーみたいなものです。
これによりリンパ球は血管の壁にぴったりとくっついてしまうんです。
この鍵と鍵穴がくっつきますと、リンパ球は血管に付着し、壁を通過して、脳、脊髄の中にはいり、髄鞘(ミエリン)を攻撃し、破壊します。

ナタリズマブ(タイサブリ)はアルファ4−インテグリンに対するモノクローナル抗体です。
これを点滴しますと、リンパ球表面のアルファ4−インテグリン(鍵)にくっついてしまって、鍵が糊付けされたようになり、鍵が鍵穴にささらなくなる。 そのためにリンパ球は血管の壁にくっつけなくなって、流れていってしまう、脳を攻撃できなくなるとわけです。

また、すでに血管の中に入ってしまっているリンパ球にも、膜の表面にくっつき細胞の自殺を誘導し殺すという効果もあります。
その結果として、再発が非常に減り、障害の進行も抑えます。



(2)ナタリズマブの高い効果

障害の進行に対する影響を、日本の治験でしらべたデータを紹介します。

障害の重さをEDSSという数字であらわすのですが、治験が始まった時、偽薬(プラシーボ)があたった方は平均が2.0でしたが、 6ヶ月には2.2にまでわずかですけれど悪化していました。
一方、本物が当たった人はスタート時が平均2.5だったのが2.3と良くなっていました。
プラス0.2とマイナスの0.16、その差が0.35で、統計的にも有意差でした。 6ヵ月という、短い期間に差がでるということは今までなかったことで、大きな違いです。

フィンゴリモドでは3年半くらいで障害が半分になったと言いましたが、これは6ヶ月間で、すでに差がでたと言うことです。




(3)ナタリズマブの副作用:PML

一方で、この薬には重大な注意点があります。PMLという病気をおこす可能性があるんです。
ただ、これが起きる方は最初からだいたい特定されます。
起きる可能性がある方はですね。
PML(progressive multifocal leucoencephalopathy)は進行性多巣性白質脳症と訳しますが、 脳の中のオリゴデンドログリアという多発性硬化症で攻撃対象になっている髄鞘を作る細胞の中にJCVというウィルスが感染することで起きます。

多発性硬化症と似たような病巣が脳の上半分に集中的におきています。もし薬を使い続ければ死んでしまうことになります。 治療はこの薬を直ちに止めることです。

白血病なんかで起きる時は、薬を止めても、なかなか元の状態に戻らず、高率に死亡するので、非常におそれられています。




(4)PML発生を起こさない使用が可能

しかし、この薬の副作用としてのPMLの予防と治療は、最近、非常に研究が進んでいます。
防止方法、治療方法がかなり明らかになってきています。
発症しないことが事前にわかる人も多いですし、発症の可能性がある人でも、安全に使用することが一定期間は可能です。

予防が何よりも重要ですが、JCVに感染していない人にはこの副作用は起きません。

血液でウィルスの抗体価を事前に測定しますと、日本では感染している人が60%くらいですが、抗体価の低い人では、発症はほぼありません。 使用中は6ヵ月毎に、会社が非常に正確に測定をしてくれます。

また、過去にイムラン、ノバントロンなどの強い免疫抑制剤を長期に利用した人で、特に発症が多いことがわかっていますが、 私の患者さんでは、そうした治療を、以前からしないようにしています。



(5)PMLは早期発見で障害をほとんど残さない治療が可能

JCV抗体が陽性でも、免疫抑制剤を使っていなければ、点滴を初めてから2年間は、ほとんど安全です。

抗体価が高い人では、2年を経過したころから、100人に一人程度発症することがわかっています。
正確な知識を持ち、注意をして使用する医師であれば、安全な使用が可能です。
2013年で、全世界で11万人くらいの方が使っています。

万が一PMLが起きても、早期発見をすれば、ほとんど障害を残さず治療が可能であることもわかっています。

PMLを早期発見したり、疑いを持ったら何をするか。先ず、点滴を直ぐ中止します。 次に血漿交換を実施します。体内に残っている薬を急ぎ取り去ることが治療になります。

血漿交換を直ちにやってもらえる病院が必要です。 京都民医連中央病院では血漿交換専門の熱意ある先生がおられますので、そうしたことは起きないようにしてはいますが、万一の時でも、対応してくださいます。

そうした対応が保障できない病院が多いので、この薬の開始に躊躇し、不必要に患者さんに副作用の可能性を強調して、怖がらせることがあります。




(6)PML早期発見には定期的、専門的MRI観察が必須

ただ、早期発見には、そのための撮り方でMRIを繰り返しとり、画像の判定に熟練した医師が、注意深く観察することが必要です。 我々はそうした方法を以前から実践しています。
現状では、そうしたことが可能な医師、病院は、非常にわずかだと思います。また、必要な時に何時でもMRIを撮れる病院もあまりありません。

特に日本の大学病院はかなり先に予約を入れ、やっとMRIがとれるところがほとんどで、MSの治療に適しているとはいえません。

一方欧米では、保険の制限、撮影料が非常に高いなどで、MRIは年1回というのが普通です。
そのため、PMLが進行し、認知症など重い症状がでて初めてMRIをとることになります。
大きな病巣を発見し、点滴を止めることになるのですが、点滴を止めたことにより、リンパ球が急速に脳内に入り、大きな病巣では病巣破壊反応が激しく、 周辺の脳の強い浮腫が生じ、そのために死ぬ患者さんが多いのです。

欧米でも、早期発見できた例ではそうしたことがなく、障害の進行もほとんどありません。


大阪の入野医院と京都民医連中央病院での多発性硬化症(MS)の専門医療