入野医院(大阪 難波駅5分)
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MSの治療

MS治療薬は世界で12種、日本では5種
早期治療開始の重要性の根拠
インターフェロンβ(アボネックス、ベタフェロン)
フィンゴリモド(イムセラ/ジレニア)
ナタリズマブ(タイサブリ)
グラチラマー酢酸塩(コパキソン)
国内で治験進行中のMS薬
「MS治療に伴う副作用」をどう考えたらよいのか
  

「MS治療に伴う副作用」をどう考えたらよいのか

(1)副作用報告の間違い、治験の不正、虚偽研究報告につき

皆さん気になると思いますが、フィンゴリモド(ジレニア、イムセラ)、ナタリズマブ(タイサブリ)その他の治療薬に関し、 インターネットなどで飛び交っている「副作用」に関する記載には、患者さんの誤解、医師の経験不足や情報入手不足による誤解、過剰表現や間違いなどが少なくありません。

2000年頃にインターフェロンをMS患者さんに使いだしたときも、一部の医師が副作用、危険性を誇張し、経験や情報の不足していた多くの医師が使用を躊躇したことと似た現象です。

こうした間違いの最大の理由は、実際は薬服用と関係なく生じた問題を、薬が起こしたと医師や患者が誤解することです。

自分が担当する患者さんで、薬をのんだあとで起きた身体的問題症状、検査値の異常につき、医師自身が 「薬剤による可能性は少ないが、疑いを完全には否定できない」場合は、しばしばあります。

こうした時、医師は当局に対し、報告を提出することが義務づけられています。
この時に、「疑いを否定できない」との選択枝はなく、薬との関係が無いと断定できる明確な根拠が無ければ、 「薬に関連した有害事象として報告する」よう求められています。

そうした情報は貴重ですが、多数の報告を収集して、本当の副作用は何かを、科学的、批判的に分析することが必要です。 しかし、「副作用による疑いが否定できない」のが事実であるのを、「副作用である」と誤解すること、誤解し易く表現されていること、がしばしばあります。

薬の使用経験の無い医師は、最初は神経質になりますし、否定する自信がなく、副作用として報告することが多いのです。

疑いを否定することは、十分な検査がなされていても、なかなか難しいことですが、全ての検査ができていることは多くない中で、 判断せざるを得ないのはやむを得ないことです。

また、後に報告の判断が間違いだったと判明しても、間違いだったと再び届け出ることは、残念ですが、ほとんどありません。
多忙以外にも、誤診の届け出は不名誉だったり、訴訟に結びつく可能性もあります。私自身、そうした例を何度も見聞しています。



(2)副作用、効果の判断に最も重要なのは、治験での偽薬服用群との比較

副作用を判断する時に最も頼りになるのは、治験に参加された患者さんのデータです。

治験では、普通、本物の薬をのむ人と、偽物の薬(プラシーボ)をのむ人を、意図的に分け、本人も医師も、 いずれをのんでいるのか分からない状態で長期間観察し、非常に詳しい検査をします。これを2重盲検比較試験といいます。
無論その前に安全性と有効性をある程度確認してからこうした試験を行います。

その期間中の症状や検査データは、治験終了時に固定(ロック)され、後で改変できない状態にして登録されます。
そのあとで責任ある管理者がキーオープンといいまして、だれがどちらの薬をのんでいたかを、データ解析する人達に報告するのです。

厚生労働省はこうした全てのデータを直接にチェックします。こうした、嘘のデータを作ることは不可能なオープンなシステムで、治験を行うことが、世界で取り決められています。

ある問題が副作用であるかどうかを判断する時に最も頼りになるのは、その問題(有害事象)が、「本物の薬」と、 外見は全く同じだが「効果の無い偽物(プラシーボ)」をのんだ多数の人達の間で、どの程度の差があるかを見ることです。
MSの薬の場合は、数千人の人達での1年から3年の、二重盲検での観察が行われます。

偽薬(プラシーボ)でも同程度に起きる有害事象(例えば肺炎、発疹、肝機能障害)は、薬とは関係ない、偶然の現象だと判断します。 他の身体的、精神的、環境などの理由に基づくものと考えます。

ですから、「偽薬を使ったMS患者さん」と「本物の薬を使ったMS患者さん」の多数で比較し、 両グループの間に明確に差がある問題(例えば肝機能検査値の上昇)が、確実な副作用であると考えるのが科学的な態度です。

偽薬(プラシーボ)より高頻度に起きている問題があれば、薬の副作用である可能性が高いと判断し、 なぜその薬がそうした問題を起こすのか、理論的背景をしらべ、対策をたてます。
対策の無い重大な問題が生じれば、その薬は、治療薬としては放棄され、承認されないこととなります。



(3)MS薬での副作用を考えるとき、あまり知られていない重大な事実

MS薬服用中に起きた有害事象(adverse event)、即ち期待していない問題事象が薬によって起きたのかどうかを判断するのに最も良いのは、先に述べた治験中の偽薬服用群との比較です。

しかし、治験が終わり、一般の使用が始まってから、実際の診察室で多数の患者さんが利用するようになって生じた、 有害事象が薬によるかどうかは、どのようにして判断すれば良いのでしょうか。

この場合、健康人のデータとの比較で、多い、少ないと判断することは危険です。間違った結論を出す原因となります。 問題の薬を使用していないMS患者さん達での問題事象の頻度を調べ、比較することが必要である、ということを示す以下のようなデータがあります。

米国の1000万人の患者データベースから抽出した15700人の「MS患者さん群」の調査があります。
年齢・性をマッチしたMS以外の「全ての他疾患群」に比べ、「MS患者群」は感染症、虚血性脳卒中、心筋梗塞、リンパ腫、 ループス・エリトマトーズス(SLE)、死亡などが1.5-4倍多く、ほとんどの他疾患も頻度が高い傾向でした。

他の色々な疾患をもった多数例と比較して頻度が高いのですから、もし「健康人群」と比較すると、一層大きな差があると推定されます。

従って、MS患者さんで起きた問題事象、例えばリンパ腫などの頻度を、健康な人での発生頻度と比較することは、副作用の可能性を論ずるときには、正確ではない、間違っていると言えます。
治療していないMS患者さんと比較することが正しのですが、医師でも誤解があります。

MSは治療しなければ、寿命が8年から15年短くなる病気です。
インターフェロンの治療の開始などで、平均寿命の短縮はそれより短くなりつつありますが、それでもすでに障害のある人が多いのが現状です。

色々な副作用の可能性が報告されているうちの、かなりの部分は、MSそのものによる様々な障害による合併症が誘因である可能性があり、薬と関係が無い問題、合併症が含まれていると言えます。



(4)「使用申請を目的とした薬の治験」と不正のあった「市販後治験」の違い

2014年、製薬メーカーで、「市販後治験」データの意図的改ざんがあったとの報道がありましたが、先に述べた「承認申請のための治験」方法とは大きく異なります。

先に述べた確実な方法で承認され市販化された後に、その薬を使い、一部の医師とメーカーが、勝手に追加的に実施した自主研究です。

当局が関与する承認のための治験とは、大きく異なります。
私は、当局の関与の無い研究報告かどうか、いつも論文を区別して読んでいます。信頼度に大きな差があります。

残念ながら、多くの一般医師は、そうした違いを認識していません。そうした教育が充分にされていないからです。
論文に書かれていること、紙になっていることが全て本当であると信じるのは危険です。批判的な精神と能力が必要です。

あ々した嘘の論文がだされる裏には、意図的改ざんで良い結果を出す、副作用を誇張する、意図しないで間違う、など色々な偽造、間違いがあります。
その原因の多くは研究者の研究費、地位への欲求、功名心などです。

製薬メーカー職員が関与し、チェックが無ければ売上を伸ばすという意図が働くのは当然です。残念なことですが、人間は欲望に弱い存在です。
重大な結果であれば、他の研究者が追試をし、間違いはいずれ正されますが、なかなか直ぐにはわかりません。

欧米の研究者にくらべ、日本では、互いに批判し、冷静に討議するという伝統が育っていません。
小学校での教育から大きな差があることを、私の子供がアメリカの学校に通学していたときに、経験しました。

欧米の学会では、その研究方法で、それだけの結論が出せないと、方法論や技術に関する批判、結果の解釈に関する批判が、日本より深く行われます。

日本から報告されるMS、NMOの治療に関する研究が非常に少ないのは事実です。 さらに残念なことは、その殆どは、少数での観察で、ある薬が効いた、効かなかったと、簡単に結論を出す傾向があります。

方法論的に結論が出せないのに、無理やりに結論を決めてしまうことが多いのです。
人目を引く結論をタイトル、結論にしなければ、学会で目立たないのがその理由でしょう。
これは、治療研究に必要な方法、解析法についての教育の不足、批判精神の不足が背景にあると思えます。


大阪の入野医院と京都民医連中央病院での多発性硬化症(MS)の専門医療