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MSの経過と脳萎縮・障害の進行

MS無治療の場合の一般的な経過

先ず、MS,多発性硬化症の無治療の場合の一般的な経過を紹介します。

かつて治療の無かった時代に、カナダでの多数例の追跡調査結果があります。
最初の症状が出現してから15年後には50%の患者さんが杖1本必要な状態、25年後には、50%の患者さんが車いすを利用する状態になっています。 50%でそうだったということは、そうなってなかった方が50%いたということでもあり、全員がそうだというわけではないのですが、高い確率です。
自分は大丈夫だろうと、期待し治療をしない選択をするのはあまりに危険なかけです。

また、初発から10年経つと50%の患者さんは徐々に症状が進行するようになり止まらない2次進行型に移行し、 さらに時間が経過するとほとんどの患者さんは持続的進行が止まらなくなっていたという結果でした。

こうした障害の進行速度は、発病初期、最初の2年間の再発の数、あるいは最初の2年間の脳のMRI病巣の数が多いと、早く進行する傾向があることが分かっています。
そういうものが多ければ治療を、よりしっかりする方が良いと言うことが言えます。

MSは潜在的に継続して進行する疾患

最近になり分かってきたことは、MSは潜在的に、継続して進行する疾患であるということです。
症状が出た時だけ疾患が動いている、活動しているのではありません。多くの神経内科医師がこのことを理解していません。

これは、最初の症状が出る前にも、出て診断がついたあとでも、自覚したり医師が確認したりできる症状と結びつかない、 潜在的な病巣の蓄積が、水面下で継続しているということです。
初発の症状が出たときに、すでにそれ以前に出たと思える古い病巣の蓄積を見ることが多い。 最初の症状がでる以前にたまたまMRIを撮ることができれば、多くの場合は何年か前に活動がはじまっていたことを確認することが可能です。

多発性硬化症はMRIで見えるような大きな病巣がでていても、20個に1個程度しか症状をだしません。 またMRIでも見えない、顕微鏡ではじめて見つかるような病巣が出現することが繰り返して起きているが、 患者さん自身では、また医師も、気がつかないのが特長です。
こうしたことはMRIの詳細な観察でわかってきたことですが、現在でも御存じないDr.が非常に多い。 年に一回だけMRIを撮るとか、再発があった時だけMRIを撮れば良いという考えでやっておられる方が多いのですが、それは間違いです。
多くの方で3月に1回の撮影が必要で、毎月必要な事もあります。


MSでは通常のMRIでも分からない病巣の蓄積が持続しています

さらに残念なのは、MRIで分かるのもかなり大きな病巣だけで、小型病巣はMRIでは見えないことです。
実際には、MRIで正常であると考えられていた部位でも、病巣形成の進行がつづいていて、神経繊維の切断がゆっくりと増加していることが分かってきています。
研究用の機能的MRI(fMRI)と言う方法や、病理解剖で、正常であると思っていた脳の部分を調べての結果です。

少し余談ですが、私のMSクリニックに、この2年間ぐらいの間に4組の一卵性双生児の女性MS患者さんがこられました。
一卵性双生児のもう一人は全員でMSの診断がついていませんでした。ところが、もう一人の方、全員女性ですが、に来て頂き、調べますと、全員がMSでした。 わずかの症状がすでに有る方、全く無い方もおられます。
診断はついていなかった。しかしMRIで調べると全員MSの特徴的病巣がすでにあるのです。

診断がついていても、御自分では安定していると思っている時期に、潜在的に少しずつ病気は進行していることが多いのが特徴です。
MRIを定期的に撮ることが大事です。しかし、それでも全て分かる訳ではありません。

障害固定化の主な原因は神経細胞/軸索障害の増加

次に、いろいろな障害がどのようにして回復しないのか、積み重なって重くなってゆくのかについてお話します。
MSでは再発があっても、初期には完全ないし部分的に回復することが多いといわれています。 MSの病巣は脱髄病巣といい、神経軸索を取り巻く衣のような構造である髄鞘(ミエリン)が特異的に壊されるが、内部の神経軸索は障害されないといわれています。 しかし、髄鞘を攻撃する炎症が強いときには、内部や近くの神経細胞・軸索が同時に攻撃されてしまい、障害をうけます。

この図の上半分にある3本の神経線維のうち上から2番目の繊維は炎症の中央部にあり攻撃が強く、軸索が切断され、 左端にある神経細胞も変性し弱っており、切断部から右の方、末梢側の神経線維は連続性を失っています。 この神経線維の信号を受けるはずの右端にある次の神経細胞は信号がこなくなり、二次的に死んでしまっています。

人間の中枢神神経は再生能力がほとんど無いのが残念な事実です。

MSの急性再発で症状がでた後、回復不十分で後遺症が残ってしまうのは、神経細胞・神経軸索が壊れた結果です。 脳、脊髄、視神経で神経細胞がこわれると、自然に回復することはほとんど無いのです。 再生しない神経細胞を守るのは、現在の医学では先ず壊れないようにするしかありません。


脳・脊髄萎縮の進行

次に脳の萎縮につき説明します。脳萎縮というのは人間だれにでも30歳を超えた頃から加齢現象としてゆっくりと進行します。 健康人では年に0.1-0.3%程度と言われています。
多発性硬化症の患者さんではそれが早くなり、平均で年に0.5-1.0%、即ち3、4倍の速度で萎縮します。 こうした萎縮は発病の初期から持続して始まっていることも示されています。
脳萎縮があっても、またMS病巣が積み重なっても、必ずしも認知症や他の脳症状には繋がりません。 脳にはかなりの予備があり、バイパスが用意されており、直ぐに症状はでません。症状がでるのは、かなり進行してからですが、 症状がでてから症状を抑えたり、進行を止めたりするのは大変難しくなります。

右のスライド写真はインターフェロンが使えるようになる10年以上前に私の外来に来られた若い女性の脳MRIです。 数字の0から10の順に、2年毎に撮影しています、左右対称です。10年間の間に大脳深部の白質という白く写っている部分が萎縮し、薄くなっています。

結果として、脳中央に黒く写っている脳室という水たまりが拡大しています。脳組織が失われ、水たまりが大きくなったということです。
前の図で説明した神経繊維の破壊、切断が次第に多くなる結果です。この女性では10年目には明らかな認知症がでて、歩行のふらつきが強い状態でした。

しっかりした治療をして神経線維が切断されないようにすることが予防方法であり、有効なお薬につき後で説明します。非常に重要なことです。

進行型(一次、二次)多発性硬化症の原因

次に、何故MSの患者の経過中に障害が持続進行するように変化するのか、について説明します。

MSで最大の残された問題は、経過が長くなると、多くの患者さんで、毎年ゆっくりと障害が進行しだし、止まらなくなることです。 これを二次進行型への移行といいます。最初から、ゆっくりとした進行がとまらない一次進行型の方もおられます。 こうした、持続進行が始まる2つの原因を以下に説明します。

第1の原因、これは以前から分かっていたことです。
神経細胞・軸索のうち過去に一定の障害をうけたが、生き残って働いているものが、長い年月の後、早死にしてしまうものが、ゆっくりと増えてくることです。
過去に部分的に障害を受けたが、少し機能が低下しただけで、がんばって働いている細胞が、疲れてきて、早めに機能を停止してしまいます。

第2の原因は最近に分かってきたことです。
発病から10年20年と時間が経ちますと、だんだん明らかな再発は減ってきます。 しかし、そうした方では、脳や脊髄の中にリンパ節のような構造が出来てきて、内部でゆっくりとした慢性の炎症が続くようになるということです。
リンパ節構造は、全身にはあっても、脳脊髄には普通はありません。 初期には全身的な炎症の一部としての大きな炎症病巣がでて、血管の破綻を伴い、血管からリンパ球などが多数侵入する。 しかし後期には、脳脊髄内部に限局した、微細だが慢性的な炎症が持続するようになる。 血管の破綻はもうなく、全身投与下薬物で、主に血管内で効果を発揮するインターフェロンなどの従来の薬物は効果を発揮しにくくなる。


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